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無人のデスクを持ち続けるのはもうやめよう

オフィスを見回した時、多くの空席を目の当たりにしますか?もしそうだとしても、それはあなたの会社に限ったことではありません。Regusが行ったリサーチによれば、平均的なオフィスは終業時間内の55%が無人または未使用となってます。大企業ともなると、空席一つあたりにつき年間2万1000ポンドという高い代償を払っているのです。

しかもその代価は経済的なものに留らず、会社の敏捷性や従業員の生産性にも関わっています。もはやオフィスにあるデスクの台数が、従業員の生産性と一致することはないのです。完全に固定されたスペースは、市場の需要に迅速に対応していこうとする際の重しになる可能性が高いと言えるでしょう。

そこで今、多くの企業が従来の固定されたオフィス空間を捨て、より柔軟性のある形態へと移行しつつあります。

結局はお金の問題

従業員数の変動やフレキシブルな勤務形態への移行により使われていないオフィススペースなどの物理的資産にお金を払うのは大きな浪費です。

香港では、オフィススペース1平方フィートあたり年間165ポンドのコストがかかり、価格はまだ上昇を続けています。ニューヨークでは99ポンド、東京は81ポンド、サンフランシスコなら68ポンド。こういった莫大なコストは、従業員数5000人・オフィス数75拠点の企業の場合、固定モデルをやめることで約550万ポンドも節約することができます。

機敏な反応を保つ

英国のEU離脱やテロリズム、急成長を遂げる新たな地域の出現といった経済的および政治的な不確実性は、大企業が様々な脅威に直面していることを意味すると同時に、事業を拡大し、状況に適応していくための好機でもあります。大企業には、よりダイナミックで目まぐるしく変化する市場に対応するための準備が欠かせません。

こういった急激な変化において最も困難な課題の一つに、必要人員数とワークスペースの需要を調整するという「既知の未知(Known Unknown)」があり、契約労働者やアウトソーシング、また外部のテクセンターの増加により、この課題はこれまでになく不透明性を増しています。それをより困難にしているのが、クライアントや従業員により近くありたい大企業が抱えるロケーションの問題でしょう。

つまり今日の大企業はこのように変化の速い状況で、半年後にどこでどれだけの床面積が必要かということを予測することさえ難しいのです。伝統的なリース契約で基準とされる5年先などもってのほか。けれども多くの企業不動産戦略ポートフォリオは、市場の需要に反応するようには設計されていません。長期的な契約義務を要し貴重な資本を拘束することで敏捷性さえ妨げる、従来の固定されたオフィススペースを念頭に作られているのです。

一方的なアプローチは終わり

企業側のニーズが変化しているだけでなく、雇用者側の希望も変化してきています。企業の社員、モバイルワーカー、プロジェクトチームや非正規労働者が入り混じる中で、大企業の標準的人員には交流やワークスペース、コラボレーションといった要素において様々な形での対応が必要となってきています。

『The Future of Work』の著者であるジェイコブ・モーガンは「組織はもはや、従業員が特定の場所で作業することを前提にはできない」と指摘しています。そのかわりに組織は、従業員たちが利用したくなるようなインスピレーションにあふれる空間を提供する必要があるということです。それは単にオープンプランのオフィスを用意することではありません。モーガン氏は「(こういった)企画に投資している組織は、様々な作業形態に対応可能なフロアプランにも投資しています。一方的に押し付けるだけのアプローチではいけないのです。つまり、従業員が様々な形態での作業を望んでいることを認識し、実現していくということなのです。」と述べています。

カナダの電気通信プロバイダであるTelus社は、このアドバイスを取り入れたワークスタイルを打ち立てました。これにより2万7000人の社員(全従業員の70%)が、家庭とオフィスやその他の場所を自由に行き来して好きな場所で仕事をする形態を実践しています。従業員のエンゲージメントは、6年間で54%から87%に増加し、その過程で会社側は300万ポンドを節約できました。そして年間8000トンの炭素排出量の削減に至りました。

フレキシブルなワークスペース vs 固定されたオフィス

大企業は敏捷性と生産性というコスト面での新たな要件に直面し、不動産戦略の見直しが必然となっています。多くの場合、解決策は完全なる固定されたオフィスでもフレキシブルなワークスペースのどちらでもなく、双方をブレンドしたポートフォリオです。

フレキシブルなワークスペースをアウトソーシングすることで、企業は建築費、オフィス家具、テクノロジーといったコストを排除し資本支出を削減できる上、スペースのより効率的な使用が保証されます。またそれだけでなく、急速で活発な変化に備え、生産性の高い労働力を得ることができるのです。使われていないデスクを取り払ってしまう時ではないですか?