生産性向上

オフィスデザインが生産性に及ぼす影響 最新の調査結果

大企業のオフィス空間のデザインに革命を起こした、オープンプランオフィス。いくつもの個室からなるオフィスと周囲から隔離された作業スタイルから、人数が増えていくにつれて独創的なアイデアがどんどん生まれるというコラボレーションを重視した新しい考え方へと変化をもたらしました。インターナショナル・マネー・マネジメント・アソシエーション(International Money Management Association)によると、現在70%ほどのアメリカ人が仕切りの無い作業環境で勤務していることが分かっています。この結果だけを見ると、オープンプランオフィスが広く普及していると思えるかもしれません。しかし、最近の傾向はその逆のことを示しています。

オープンプランの時代の終焉

リーズ大学(Leeds University)のマシュー・デービス(Matthew Davis)博士は、包括的なオープンデザイン離れが進んでいるのは、働き方に関して「人々にコントロールの権限を取り戻させる」ということを意味していると語っています。最近の調査では、オープンプランオフィスに勤務するイギリス人のうち、作業環境に満足していないと回答した人の割合が50%にまで上っています。特に、周囲の騒音や室温調節に関して不満があるという結果が出ています。また、およそ85%のアメリカ人がオフィスで集中することが困難であると感じているのです。

それだけではありません。オープンプランオフィスではアウトプットにも悪影響をもたらす可能性があることが調査によって繰り返し指摘されています。例えば、最近のカナダの調査では、オープンプランオフィスで効率的に作業が出来ると回答した従業員の割合はたったの6.5%でした。イプソス(Ipsos)の調査においても、集中力が妨げられることが原因で従業員は一日に平均86分間も無駄にしているという結果が出ており、前述の結果を裏付けています。

つまり、区切られたオフィス空間と個室からなるオフィスに戻るべき?

必ずしもそれが正解とは限りません。アクティビティ・ベースト・ワーキング(activity-based working)という新しい業界用語があります。この言葉は、様々な種類の作業スペースを設けることを意味し、オフィスのデザインにはすべての用途に合うようなモデルは存在しないという見解に基づいています。

これらのデザインは、「区分ごとに分割された」オフィスのレイアウトとして徐々に認知されてきています。チーム作業や共同作業を促進してくれる包括的なオープンプランのような雰囲気を保ちつつ、プライベートブース、スクリーンやピンナップボードを設置したカジュアルなプロジェクトルーム、時にはルーフガーデンや携帯電話利用可能ゾーンなどのスペースを追加で設置することができます。

誰もが満足出来るオフィスと言えるか?

生産性を落とさずに、活気のある環境を維持したいと考えている大企業にとっては、確かに好都合な話と言えるでしょう。リージャスの調査によると、異なる役職のスタッフが交流することで新しい考えが生まれると考えている企業は世界的に平均して36%に上るという結果が出ています。日本やオーストラリアでは約50%にも達しています。そして、そのような交流は区分ごとに分割された空間では不可能というわけではありません。つまり、特定のプロジェクトを集中して進める必要がある人のために静かな環境の作業スペースも用意されているということを意味しているのであり、様々な状況に適応した作業環境の設置が良い結果をもたらすという認識に基づいているのです。最近のオランダの研究では、作業環境の改善は生産性を最大15%まで増加させることが出来るという結果も示されています。